北海道に伝わる獅子舞には、2人で演じる「二人立ち」と、6人~10人が大きな胴幕に入る「百足(むかで)獅子」の2種類があります。芦別獅子は百足獅子に分類され、唐獅子牡丹の長い胴幕の中に10人が入り、先頭に獅子頭を持つ頭役が、舞を先導します。その鼻先には子どもの獅子取役がつき、お囃子も含めると総勢30人程度が必要となります。
ここでは、芦別市指定文化財(無形文化財)でもある芦別獅子を紹介します。
この獅子舞は、開拓時代に富山県からの入植者によってもたらされました。明治28(1895)年、富山県砺波(となみ)地方から現在の芦別市の本町付近に入植した人々は、翌年すぐに神社を建立します。そして神社への奉納行事として、ふるさと富山で盛んな獅子舞(越中獅子)を導入。明治33(1900)年に獅子舞が行われたのが、芦別獅子の起源とされています。
余談ですが、富山県は伝承される獅子舞の数が全国でもっとも多く、「獅子舞日本一の県」を掲げるほど。獅子舞に熱い想いを持つ土地から伝えられた芦別獅子だけに、人を引きつけてやまない魅力があるのも納得です。
芦別獅子の見どころは、なんといっても巨大な獅子が大きく動きながら舞う迫力にあります。上写真のとおり胴体は約10人で受け持つので、大きくダイナミックな動きが可能になります。ただしあまりの激しさゆえ獅子の舞手は疲労が激しく、交代要員が必要とか。
芦別獅子のもう一つの特徴として、獅子を退治する天狗の存在があります。ヒラリと舞う天狗と力強い獅子による、時にユーモラスに、迫力満点に演じられるストーリーこそが芦別獅子の醍醐味。にぎやかなお囃子も調子よく、元来神楽を起源とする獅子舞の性格がよく表れています。
とはいえ他の伝統芸能同様、後継者不足は深刻な問題。芦別獅子は何度か存続の危機を迎えます。昭和62(1987)年からの公演中断は数年に及んだものの、平成元(1989)年の芦別開基100周年を契機に復活。それでもなお将来的な不安は残ったままでしたが、平成12(2000)年、2つの団体が「芦別獅子保存会」として一本化し、精力的な保存活動がスタートしました。以後は本家の富山県との交流や遠征公演など、積極的な活動を展開。芦別獅子保存会は、健夏まつりと芦別神社例大祭での公演を中心としながら、次世代に文化をつなぐための活動に取り組んでいます。