陶芸家・千葉尚(たかし)さんの窯元である一尚窯(いっしょうよう)。ここから生み出される器は、明るく爽やかな白~青系の色彩が魅力的です。そしてもう一つ、陶芸の世界で今話題になっている、とある技法も積極的に取り入れています。
白を基調にしながら、少量の青や緑が入る色彩が特徴の一尚窯。その色の秘密については「釉薬(ゆうやく、うわぐすり)の原料に、芦別の火山灰を使っているんですよ。黄金町の高台に、層になっているんですよね。火山灰は鉄分を含むから、だいたいは焼くと黒くなるんですけど、芦別の灰は鉄分が少ないので白さが出せるんです」。
改めて器を手に取ると、明るさの中に引き込まれるような深みがあるのを実感できました。
千葉さんは20代から岩見沢で陶芸の修行をした後、故郷の芦別に戻り、窯元を開きました。「自分が使いたいものを作っているだけなんだよね」と笑う自由な個性が、そのまま明るい色の器に表れている印象です。
とはいえ「でもね、焼き物はたいへんなんだよ!(笑)器自体がきれいでなきゃいけないし、料理を盛り付けたときの姿も考えなきゃいけない。洗いやすいとか持ちやすいとか、そういうのもあるし。焼き上がるまでにいくつもの『試練の山』があるんです」と、陶芸のご苦労も語ってくれました。自由さの中に、プロの凄みを垣間見ることができました。
冒頭で触れた一尚窯のもう一つの特徴である技法とは、器の模様にあります。一見、筆で描かれたような美しい模様の皿には、驚きの職人技が隠されていました。
(左)温かみのある幾何学模様が美しい皿ですが…(右)裏面も、同じ幾何学模様になっています。
これが「練り込み」という陶芸の技法。色の違う粘土を、金太郎飴や巻き寿司の要領で重ねたり、巻き込んで模様を作ります。それを横にスライスして焼けば、こうした複雑な模様の陶器になるという職人技です。「これもね、たいへんなんです。出来上がりを予想して粘土を並べるんだけど、違う粘土を合わせるので割れやすいし、たいへん(笑)。でも面白いでしょ?」と言う千葉さん。あえて難しい職人技に取り組む姿は、心底楽しげです。
「モノを作るということは暮らしを作るということ。人は縄文時代からそうしてますからね」。一尚窯の陶器は、きっとあなたの日常のアクセントになることでしょう。
芦別市上芦別町350番地
問合せ/0124-22-0780