全国的にその名を知られつつある芦別米。寒暖差の大きい芦別で作られる米は、「日本穀物検定協会のお米の食味ランキング」で特Aの評価を獲得する、「ななつぼし」、「ゆめぴりか」、「ふっくりんこ」などが生産されています。平成24(2012)年、テレビの人気番組でおいしいと紹介されたことで人気に火がつきました。
芦別米の特徴は、甘みと粘りにあります。芦別の気候風土は農作物を甘く育てますが、お米のおいしさの大きなポイントである粘りも、他産地に比べて強くなる傾向があります。また、冷めてもおいしいのが芦別米の特徴です。そんな芦別米がおいしい理由は、気候と、生産者の努力にありました。
平成28(2016)年に、芦別米が「献穀米」として選ばれるという快挙を果たしました。献穀とは、その年に生産された米やその他の穀物などを捧げ、天皇自身も召しあがる宮中の祭儀「新嘗祭」に用いる穀物を献上することです。献穀米を収穫する行事「抜穂祭(ぬいぼさい・上写真)」が、9月23日、芦別市内の農家・山本英幸さんの水田で行われました。
春から大切に献穀米を育ててきた山本さんは「たいへん名誉なことで、うれしく思っています。芦別から献穀米が選ばれたのは初めてですが、今年は天候があまり良くなかったので心配していました。でも見事に実ってくれてこの日を迎えられて、安心しました」。
山本さんは、化学肥料と農薬を減らした特別栽培米に取り組んでいます。芦別米については「いろいろな品種があるので、どなたの好みにも合うお米があると思います。おいしい芦別米をぜひ食べてください」と、語ってくれました。
現在の北海道米の主力ブランドとしておなじみの「ななつぼし」を中心に、特別栽培米作りに取り組む芦別の米農家の団体が「芦別市きらきらぼし生産組合」です。組合長の西道文教(2024年6月現在)さんに、芦別米や特別栽培米のことを聞きました。
まず気になるのは、芦別米のおいしさのポイントです。「芦別のななつぼしは、周辺地域のお米の中でも粒が大きいとされています。東京の業者さんの中には、芦別米でなきゃダメとまで言ってくださる方もいますね。それには、マツコ・デラックスさんがテレビのレギュラー番組の中で言った『私は「ゆめぴりか」よりもこっち(芦別の「ななつぼし」)の方が好き』という言葉の影響も大きいです。
味や食味の特徴は、「米の成分はでんぷんなので、イモと同様、寒暖差が大きいほうが甘くなります。芦別は隣町に比べて最高気温で3度も違い、米の育ち方に影響しているようです。粘りの強さも評価されますね」。
前身団体から数えると、きらきらぼし生産組合の活動歴は25年(2016年現在)。さらに「クリーン農業(コードクリーン)」は平成8(1996)年から始めています。現在の農業で主流になってきた動きといえば、「安全・安心」と「ブランド化」です。つまり、きらきらぼし生産組合をはじめとする芦別の米農家さんは、芦別の恵まれた気候に甘えず、現在の価値基準に合う米作りに25年前から取り組んだ先見性があったということ。それは、芦別米の品質や評価を押し上げた大きな理由といえるでしょう。
質の向上と並んで今後、西道さんが目指すのは地産池消です。「本州では芦別米の指名買いが増えてきてありがたいのですが、本州で売れれば、どうしても市内や道内に回る分が減ります。北海道のみなさんに、どうすればおいしい芦別米を安定的に味わってもらえるか。それが課題ですね」。
芦別米は市内の米穀店や道の駅などで買えるほか、ふるさと納税の返礼品としても人気です。ひと味違う自慢の米をぜひどうぞ。
芦別市きらきらぼし生産組合役員の方々。前列左が、組合長の西道 文教(2024年6月現在)さんです。